「好奇心と成長が、私の制作の土台です。この20年間、その二つを原動力に、さまざまな方向へと活動を広げてきました。」

目に見えるものの先へ

パウラ・ヤシュチク(Paula Jaszczyk)は、従来の絵画の枠にとらわれず、さまざまな表現に取り組んできました。ポーランドを拠点に、美術家として制作する一方、教授、研究者、編集者としても活動しています。色彩や音、動き、空間、そして人間の知覚がどのように関わり合うのかを、一貫して研究しています。ワルシャワ美術アカデミーを優秀な成績で卒業した後、講師として母校に戻り、のちに教授となりました。彼女の活動を支えてきたのは、芸術的な実験と学術研究、そして異なる分野の人々との共同制作です。また、ディプロマ2005賞の受賞をはじめ、文化・国家遺産大臣奨学金、マゾフシェ博士課程奨学金、「ヤング・ポーランド」プログラムなどの支援も受けてきました。こうした機会に恵まれながら、特定の分野にとどまることなく、好奇心を持って制作を続けています。20年以上にわたり、マルチメディア・インスタレーションや音と映像を組み合わせたパフォーマンス、振付、音楽、空間造形などを絵画に取り入れ、その可能性を広げてきました。どのような表現に取り組むときも、制作上の判断の中心にあるのは色彩です。

ヤシュチクにとって色彩は、単なる装飾ではありません。人の感情や心理、感覚に働きかける表現の手段として捉えています。暖色と寒色、調和と不協和、リズムと対比を生かしながら、抽象と具象を行き来する作品を生み出しています。絵画では、色の組み合わせが見る人の知覚にどのような変化をもたらすかを探り、マルチメディア作品では、その関心を実際の空間へと広げています。光の投影や動く映像、音を組み合わせることで、静止した平面が鑑賞者を包み込むような空間へと変わります。平面の絵画と立体的な造形を結びつける制作には、異なる表現手段を切り離さず、互いに影響し合うものとして扱う、彼女の考え方が表れています。美術に音楽やダンス、映画、さらには香りまで取り入れ、表現の幅を広げてきました。芸術を分野ごとに分ける従来の考え方にとらわれず、さまざまな組み合わせを試みていますが、その根底にあるのは一貫して絵画的な発想です。

ヤシュチクの活動では、教育も重要な位置を占めています。2006年にワルシャワ美術アカデミーのメディア芸術学部に加わり、その後はシェドルツェ大学にも所属するようになりました。彼女にとって教えることは、自身の芸術研究を発展させる活動でもあります。アトリエで生まれた問いが、学生や音楽家、ダンサー、研究者との共同研究へと発展することも少なくありません。自ら制作することと、ほかの人々に知識を伝えることは、互いに刺激を与え合っています。こうした経験を通じて、創造性は一人で活動するよりも、他者との対話によって豊かになるという考えを深めてきました。自ら企画・編集した『Interdisciplinarity: Visual Arts: Internal and External Correlations and Tensions』(学際性:視覚芸術における内外の相関と緊張関係)などの出版物にも、その姿勢が表れています。芸術活動をさまざまな角度から考察するとともに、異なる表現が交わるときに生まれる緊張や刺激が、創作にどのような可能性をもたらすのかについても、ほかの人々に探究を促しています。

パウラ・ヤシュチク:音と空間をつなぐ色彩

ヤシュチクの創作活動に大きな転機が訪れたのは、2005年にインスタレーション作品《Kalejdoskop Podróży》(旅の万華鏡)を制作したときでした。60点の幾何学的な絵画を空中につるして立体的に配置し、そこに色彩を投影することで、従来の絵画を、鑑賞者がその場に身を置いて体験する空間作品へと変えました。ヤシュチクは後に、この制作をきっかけに、現実を描く画家という枠にとらわれなくなり、好奇心に従って新たな表現を探る美術家としての自分を受け入れたと振り返っています。この作品には、異なる芸術分野の境界を越える試みや、実体のある造形と投影された形の組み合わせ、そして色彩をキャンバスの上だけでなく建築空間にも広げることで、新たな表現の可能性が生まれるという考え方など、その後の制作を方向づける重要な発想がすでに盛り込まれていました。ここで生まれた考え方は、以後何年にもわたり、彼女の芸術研究の土台となっていきます。

こうした考え方は、2006年から2010年にかけてワルシャワ美術アカデミーで取り組んだ博士課程の研究で、さらに発展しました。芸術プロジェクト〈Inwencja C-Colour〉と、それに伴う博士論文『The Sound of Colour: A Multimedia Spatial Form as a Visual Record of a Score』(色彩の音:楽譜の視覚的記録としてのマルチメディア空間造形)では、色彩にも音楽の音と似た性質があるのではないかという問いを探っています。ヤシュチクは理論を提示するだけでなく、独自の視覚的な楽譜を制作し、音楽アンサンブル「クァルトルディウム」の演奏家たちに、その楽譜を解釈してもらいました。幾何学的な形や楽器の音色、緻密に考えられた色彩の組み合わせを結びつけた試みです。この意欲的な研究をきっかけに、彼女は和声やピアノも学び始め、作曲家や演奏家との共同制作に、より深く関わるようになりました。同時に、視覚的なリズムと音楽の構造が互いにどのような影響を与えるのかについても、理解を深めていきました。研究を進めるうえでは、ウジェーヌ・ドラクロワ、ワシリー・カンディンスキー、アレクサンドル・スクリャービン、アルノルト・シェーンベルク、ゾフィア・ストリイェンスカ、フランティシェク・クプカといった先人たちの仕事も、重要な参考となりました。しかし、ヤシュチクが一貫して目指していたのは、そうした先例を踏まえながらも、自分自身の表現方法を確立することでした。

やがて、異なる分野の人々との共同制作は、ヤシュチクの活動を特徴づける重要な要素となりました。〈Figuraté〉、〈Six Views of Paula〉(パウラの6つの視点)、〈Praeter〉、〈Blue〉(青)、〈Azure〉(空色)、〈Cobalt〉(コバルト)、〈Zocha〉、〈Myths〉(神話)、〈I Like Moniuszko〉(モニューシュコが好き)、〈Acis and Galatea〉(アキスとガラテア)、〈Bry-Tan〉などのプロジェクトでは、絵画や振付、音楽、映像が互いに影響を与え合い、それぞれの表現を変えていく可能性を示しています。2012年に始めた「クリエイティブ・ラボラトリー」は、こうした考え方を教育にも広げた取り組みです。ワルシャワ美術アカデミーとフレデリック・ショパン音楽大学の学生たちが参加し、美術を学ぶ学生は音楽的な発想を取り入れ、音楽を学ぶ学生は色彩を創作の刺激として活用する演習を行いました。そこから見えてきたのは、リズムや時間の長さ、ものの捉え方について、分野ごとに異なる考え方があるということです。ヤシュチクが大切にしているのは、単に異なる表現手段を組み合わせることではありません。それぞれが持つ独自の表現を尊重しながら、全体として一つのまとまりのある芸術体験が生まれるよう、各要素の関係を慎重に調整しています。

人の姿と動き、内面の変化

ヤシュチクの制作では抽象表現が中心を占めていますが、人の身体も同じくらい重要な題材です。〈Meanders〉(蛇行)シリーズが生まれるきっかけとなったのは、俳優でヴァイオリニストのパトリツィア・クヤフスカとの出会いでした。その印象的な容姿から、ヤシュチクはアイデンティティや感情、ジェンダーの曖昧さについて考えを深めていきます。写真による習作はやがて12点の絵画へと発展し、さらにそれらが作曲家アリツィア・グロナウによる〈Six Views of Paula〉(パウラの6つの視点)の着想源となりました。この共同制作によって、静止していた絵画は生演奏と振付を伴うアニメーション映像へと発展し、描かれた人物にも動きと時間の流れが加わりました。もともとキャンバスのために描かれたイメージが、ダンサーや音楽家の解釈によって、まったく新しい感情の広がりを持つことを示したのです。こうした異分野との共同制作は、絵画に取って代わるものではなく、それまで見えていなかった絵画の新たな側面を引き出すものでした。そして、異なる芸術表現は互いを豊かにし続けられるという、ヤシュチクの確信をいっそう強めることになりました。

この共同制作からは、ヤシュチクにとって特別な意味を持つ作品も生まれています。3曲目の《Entanglement》(もつれ)に深く心を動かされた彼女は、その曲に合わせて制作したイメージを発展させ、マルチメディア・インスタレーション《Entanglement from the Meanders Series》(〈Meanders〉シリーズの「もつれ」)を制作しました。大きくつり下げられた造形物や投影されたアニメーション、幾層にも重なる空間構成によって、断片的な人影が鑑賞者を取り囲みます。音楽と映像が同期することで、その人影はまるで生きているかのような印象を与えます。この作品には、絵画と音、動き、空間、そして感情的な体験を一つの芸術表現に結びつけようとする、ヤシュチクの長年の取り組みが特に明確に表れています。哲学者で美術史家のモニカ・ムラフスカは後に、このインスタレーションについて、人間の知覚が本質的に共感覚的であることを明らかにしていると評しました。また、ヤシュチクの創作では、見ることと聞くことを切り離して考えるのが難しい点にも注目しています。

もう一つの重要な作品が、《Composition in Green for Nature and Piano》(自然とピアノのための緑のコンポジション)です。ポーランドで最も権威ある芸術奨学金「ヤング・ポーランド」の支援を受け、約2年をかけて制作しました。ヤシュチクは長期間にわたって森に足を運び、鳥のさえずりを自ら録音。オリジナルのピアノ曲を作曲し、映像素材の制作から音響全体の編集まで手がけています。完成したインスタレーションでは、自然の録音音源に木々や樹皮の映像を組み合わせる一方、抽象的な音楽の構造を、音の高さに合わせて変化する色彩で表しています。この二つが互いに呼応するように構成されています。幾重にも重ねた半透明のスクリーンを背後から照らす展示では、写実的な映像が次第に抽象へと溶け込み、静かに思索を深められるような雰囲気が生まれます。色彩と音、知覚、環境、そして感情についての省察。ヤシュチクが繰り返し取り組んできたこれらのテーマを、絶妙なバランスで一つの感覚体験にまとめ上げた作品です。

パウラ・ヤシュチク:芸術を通じた再生

ヤシュチクの創作に、それまでとは異なる、きわめて個人的な変化が訪れたのは、2018年に深刻な心の不調を経験してからでした。うつ病によって制作活動が途絶え、自分自身を見失い、芸術に取り組む意味さえ感じられなくなりました。回復には何年もの時間がかかり、治療を受け、地道な努力を重ねながら、自分の心の状態を意識して見つめ続ける必要がありました。やがて彼女は、つらい経験を忘れ去ろうとするのではなく、作品として表現する道を選びます。もともと知覚や感情の反応について研究していたヤシュチクにとって、心理学への関心も、この時期にそれまで以上に切実な意味を持つようになりました。また、回復とは単に以前の自分に戻ることではなく、自分の弱さや立ち直る力を知り、現実を受け入れながら、新たな自分が少しずつ形づくられていくことだと考えるようになります。それまでの制作では、異なる芸術分野の関係や表現の形式を研究することが中心でしたが、こうした経験を経て、作品にも彼女自身の人生が深く反映されるようになりました。

この新たな方向性が具体的な形となったのが、2025年のプロジェクト〈Things Will Be Different Now. Things Will Be Harder Now. [The Experience of Psychological Crisis]〉(これからは変わる。これからはもっと困難になる[精神的危機の経験])です。2014年から2024年までの経験を記録したもので、10点の絵画と音と映像による作品、そしてアーティストブックで構成されています。絵画では、自身の身体の輪郭をキャンバスに直接なぞり、その形を断片的に描くことで、心が崩れていく感覚や悲しみ、自分自身を立て直していく過程を表しました。縞模様や交差する形、幾重にも重ねられた構図には、出来事を時系列にたどるのではなく、断片的に残された記憶が表れています。音と映像による作品には、アンナ・イグナトヴィチ=グリンスカが作曲したオリジナル楽曲と、マグダレナ・コルディラシンスカ=ペンカラによるマリンバ演奏が使われています。絵画から身体の一部を切り出して映像に取り入れ、音を重ねることで、作品に込められた感情をより強く伝えています。このプロジェクトは、苦しみを見世物にするのではなく、トラウマや回復、そして他者の苦しみに寄り添い、理解しようとすることの大切さについて、じっくりと考え、語り合うきっかけを与えています。

つらい経験と向き合う作品を手がけるようになっても、ヤシュチクにとって色彩は、変わらず生命力と希望の源であり続けています。絵画やマルチメディア・インスタレーション、コンサートの視覚演出から、研究、教育、出版活動に至るまで、数十年にわたるさまざまな試みを結びつけてきたのは、ほかでもない色彩でした。抽象画で色同士の関係を探るときも、音楽の構造を視覚化するときも、描かれた人物に動きを与えるときも、心の回復を作品に記録するときも、彼女は色彩が見た目の美しさだけにとどまらず、感情や知覚に働きかけ、象徴的な意味を伝える力を持つことを示してきました。現在は、美術と音楽の関係をテーマに、歴史的な研究と自身の長年の制作経験をもとにした書籍の準備も進めています。そこにも、活動を始めた頃から変わらない好奇心が息づいています。新たな表現を探り、他者との対話を重ね、さまざまな可能性を受け入れる姿勢は、今もヤシュチクの創作を支えています。