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「ディテールとは、小さなことに気づき、大地とつながることです。私たちを取り巻く変化、風景、潮の満ち引き、空、そして植物に意識を向けることです。」

自然の繊細な瞬間を捉える芸術性

1973年、オーストラリア・メルボルンに生まれたダイアン・カザキス(Diane Kazakis)は、若き日を同地で過ごした後、ポルトガル、ケニア、オマーン、ドイツ、中国など、世界各地での生活を経験しました。21年以上にわたり海外で暮らした経験は、彼女の作風や主題に大きな影響を与え、その受賞歴豊富な作品群に鮮やかに反映されています。

カザキスの作品は、世界各地で展示され、公的機関や個人のコレクションに多く収蔵されています。2023年には「注目すべきアーティスト50人」に選出され、「Contemporary Art Curator Collectors Art Prize」を受賞。また、1994年にはメルボルン大学で「アンドール・メスザロス彫刻賞」を受賞するなど、これまでに多くの栄誉を得るとともに、数々の大型プロジェクトにも携わってきました。さらに、2000年から2002年までビクトリア州彫刻家協会の副会長として組織運営にも関わり、その活動領域は多岐にわたります。

近年、彼女は個人からの依頼制作や展示活動に特に力を注ぎ、オマーン・ジャバル・アフダールのサハブ・ホテルや中国・蘇州のヒーリン・スパでのインスタレーションなどがその代表例です。各作品には、自然の要素が巧みに取り込まれ、異文化社会で培われた記憶や影響が微妙に織り込まれています。これらの経験は作品に繊細に反映され、全体を豊かに彩っています。

広大な風景や空に浮かぶ雲のような幻想的な光景から、顕微鏡で見るような微小な世界、そして人間的な調和が感じられるフォルムまで、彼女の作品は自然環境の美を際立たせると同時に、その脆弱さや衰退をも強く意識させます。現在、世界は均衡を失いかけ、人々は公平性や環境破壊、紛争、破壊的テクノロジーといった難題に直面しています。彼女の表現領域には、人為的あるいは自然発生的な環境破壊をはじめ、力強い大地や広大な海、砂漠、細胞構造、さらには星間空間に漂う星雲など、壮大かつ多面的なモチーフが折り重なっています。

想像の聖域:ダイアン・カザキスの創作プロセス

ダイアン・カザキスの作品は、儚い自然の魅力をとらえ、その中でも特に守り育てるべき繊細な側面を強調しています。彼女の表現は、人間と環境が互いに依存し合う入り組んだ関係性を、微細な点から広大な視野まで鑑賞者に想起させ、自然との深いつながりを思い出させるとともに、私たちの日常へその感覚を取り込むよう促すものです。

カザキスは、細部に目を凝らし、大地との深い結びつきを大切にすることの意義を信じています。彼女の作品は、刻々と変化する景観、潮の満ち引き、空や植物の移ろいを映し出し、私たちが周囲への意識を高め、行動へと踏み出すきっかけを与えます。

芸術は、カザキスにとって静寂の中で思索を深める聖域であり、創作行為は瞑想に近いものです。2020年初頭、ヨーロッパで初期の乳がんと診断された彼女は、治療後に中国へ移り、上海での28日間の隔離生活中に「Meditative Circles」シリーズを生み出しました。

この経験を通じて、彼女は細胞構造に対する関心を一段と強め、拡大された植物組織を想起させる金属線を取り入れ、ターコイズブルーの海や雲のモチーフと融合させています。こうして形成される流動的で調和のとれた世界観は、大気、大地、水が溶け合う新たなビジョンとして結実しています。

新たな表現手法と視点を求めて

ダイアン・カザキスの新作「From Her to Eternity」は、大地に宿る女性的なエネルギーを称える一枚です。アクリルとインクを用いて、水面に広がる波紋のような有機的なパターンを描くことで、自然の力がキャンバスを超えて永遠へと広がるイメージを表現しています。

彼女の着想源には、若い頃に熱中したギリシャ・ローマ神話や古代美術、地図学、地質学などがあり、こうした多面的な関心は作品全体に微妙な影響を与えています。オーストラリア現代美術家ジュディ・ワトソンの色彩・パターン、ジョージア・オキーフの主題とスタイル、印象派理論なども、彼女の創作に反映されています。

制作環境は、自然光と広いスペースが欠かせません。床に座って自由に動けるスタジオには、作品や材料を収める余裕があり、一角にはソファやアートブック、心を揺さぶる小物が並ぶコーナーを設けています。ここでウェブ管理やSNS更新、展示計画、スケッチなど、あらゆる作業を行います。

お香やキャンドルの香り、瞑想音楽からメタルまで、気分に応じて変わる音楽も重要な要素です。朝は犬と湖畔を散歩し、道なき道を進みながら新しい発想を得ることもあります。中国・常熟の寄宿学校キャンパスで家族と暮らしながら、彼女は多忙な日常をカレンダーやスマホのリマインダーで整えつつ、新たな芸術表現への探求を続けています。

ダイアン・カザキス:新しい境地への挑戦とコラボレーション

ダイアン・カザキスは、彫刻を専攻し、写真、木工、版画、絵画、陶芸、テキスタイル、デザイン、ドローイング、金属加工など、幅広い技法を学んできました。こうした多彩な背景が、彼女が現在多面的な制作スタイルを実践するうえでの基盤となっています。

彼女は素材や手法を自在に行き来し、世界各地の環境、素材、制作空間に応じてさまざまな組み合わせを試します。複数の作品を同時に進め、乾燥時間や自身の気分に合わせて着手する作品を変えることで、常に新鮮なアプローチを維持しています。

近年はインクや水彩を、キャンバス、紙、木板といった多様な下地に用いて色彩が自然に広がる様子を見極めながら、部分的に塗り重ねて完成させる手法をとっています。その結果生まれる作品は、風景を想起させつつも直接的な再現ではなく、内面や精神世界、地質構造や光の揺らめきといった要素を内包した、新たな自然観を提示しています。

彼女は常に使用する素材や制作方法を見直し、新たなコラボレーションの機会を探っています。すでに化粧品ブランドの限定パッケージ制作を手掛けており、今後もこのような取り組みを拡大していく予定です。また、ホテルやスパ向けの作品制作など、さまざまな分野で活躍しています。さらに、アートとヨガを組み合わせたリトリートの開催も検討しており、自然の中で創作と自己探求を深める体験を提供したいと考えています。