「フルタイムのアーティストになったことで、何ヶ月も家に閉じこもる日々の中で感じていた重苦しい気持ちから抜け出すことができました。」
ロレッタ・リバウド・カーター:パースからローマへ、創作と感性の旅
ロレッタ・リバウド・カーター(Loretta Ribaudo Carter)は、西オーストラリア州パースの自然豊かな環境で育ちました。彼女の幼少期には、両親が経営する活気あふれるレストランと、芸術やデザインに情熱を注ぐ母親の影響が色濃く刻まれています。
母親はピカソやシャガール、マティスといった巨匠の作品を通じて、芸術の美しさや奥深さを娘に教えました。その教えは、彼女が色彩や形、質感の魅力を感じ取り、自らの感性を育む原動力となりました。一方で、父親は料理を通じて、鮮やかな色彩や香り、そして人とのつながりの大切さを伝えてくれました。こうした芸術と料理が交わる環境で過ごした日々は、彼女の感受性を大きく広げ、後の創作活動におけるインスピレーションの源となりました。
ロレッタ・リバウド・カーター:ローマで花開いた芸術の探求
1992年、ロレッタ・リバウド・カーターはイタリアの歴史と文化に息づくローマに移り住み、本格的に芸術の道を歩み始めました。この創造的な環境の中で、彼女はショーウィンドウの装飾、インテリアデザイン、アンティーク修復など多岐にわたる活動に携わる一方、美術学校で自身の表現力を磨いていきました。
その後、2000年に故郷パースへ戻ると、インテリアデコレーターやビジュアルマーチャンダイザーとしての仕事を続けながら、夜間学校で版画やアートセラピーを学び、さらに専門性を高めました。この時期、彼女はグループ展に参加するほか、6回にわたる個展を開催し、芸術家としての実績を築いていきます。これらの活動を通じて、彼女の作品は個性と革新性に満ちたものとして高く評価されるようになりました。
広がる地平と試練:マレンマとパンデミック時代のコモ湖での創作活動
2018年5月、ロレッタ・リバウド・カーターは夫とともに南トスカーナのマレンマ地方へ移り住みました。豊かな自然に恵まれたこの土地で、夫妻は1年間にわたり多くの作品を制作し、創作活動に没頭しました。
2019年11月、夫妻は新たな創作の地としてコモ湖に移ります。しかしその直後、世界中で新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、予想外の困難に見舞われます。外出制限が続く中、カーターは絵を描くことに専念し、日々の制作が彼女にとって大きな支えとなりました。画材が手に入りにくい状況下でも、身近にあるフォトコピー用紙を活用するなど工夫を重ね、創作を続けました。
2021年6月、カーター夫妻はグラヴェドーナにアトリエ「L & Jアートスタジオ」を開設しました。このアトリエは、彼女たちの作品が生まれる場所であると同時に、芸術が生き生きと息づく場として現在も活動を続けています。
多彩な視点が描く未来:ロレッタ・リバウド・カーターの挑戦
ロレッタ・リバウド・カーターの作品は、キュビズムや具象画、現代美術、ナイーブアート、抽象表現といったさまざまなスタイルを融合させています。その表現は、色や形を通じて彼女の内面や創作のひらめきを生き生きと伝え、見る人を感情豊かな世界へと引き込みます。アクリルや油絵具、クレヨン、木炭など、多様な画材を駆使しながらも、自作のキャンバスを使うなど、細部にまでこだわる姿勢がうかがえます。
カーターの創作活動は絵画にとどまりません。リサイクル素材を使った彫刻や、スカーフやビーチウェアのデザインといったファッション分野にも挑戦を視野に入れています。また、長年温めてきた書籍の出版という夢も追い続けています。
彼女の表現を支えるのは、自由で力強い筆使い、絵具とキャンバスが生み出す動き、自然や動物、人々への深い愛情、そして平和と静けさへの憧れです。こうしたテーマが一体となった作品には、彼女自身の物語が映し出されるだけでなく、多くの人々が共感できる普遍的なメッセージが込められています。絶えず新しい挑戦を続けるカーターの創作は、これからも多くの人々に刺激を与え続けるでしょう。