「アーティストとして成功するということは、たとえ抽象的な作品であっても、どこか新しさや意外性のある素材を使い、コレクターにとって唯一無二のものを届けることだと思っています。」
太陽の光が導いた創作の場
ドリュヴィ(Drewvy)がアーティストとして本格的に歩み出したのは、幼い頃から絵に親しんできたからではなく、人生の方向を見つめ直したことがきっかけでした。広告とグラフィックデザインを学び、当初はデザインの世界でキャリアを築くことを夢見ていましたが、現実は思い描いたようには進まず、彼は自身の進む道を見直すことになります。そして彼は、パームスプリングスへと移住します。この地で出会ったのは、自由で実験的な表現を歓迎するアーティストたちのコミュニティでした。乾いた大地に広がる砂漠の風景、彫刻のようなミッドセンチュリー建築。そんな刺激にあふれた環境の中で、彼は創作への意欲を大きくかき立てられていきます。広い空の下、感性を分かち合える仲間たちと過ごす日々の中で、彼はアート作品や装飾的なオブジェの制作に真剣に取り組み始めました。そこには、彼自身のまなざしと、この土地がもたらすインスピレーションとが、静かに溶け合っていきました。
ドリュヴィの創作の原動力となっているのは、常に何かを探ろうとする好奇心です。何気ない発想が、やがて複雑で奥行きのあるプロジェクトへと発展していくこともしばしばあります。その過程で予測不能な展開を楽しむ柔軟さが、作品に豊かな広がりをもたらしています。伝統的な素材を新しい視点で捉え直したり、美術の枠にとらわれない要素を取り入れたり——そうした自由な姿勢こそが、彼の表現を唯一無二のものにしています。いずれの作品も、量産された装飾品とはまったく異なる佇まいを持ち、彼の創造性を凝縮した一点物として空間に個性を添えます。何気ない日用品や一瞬のひらめきから着想を得て生まれる作品は、それぞれに異なるリズムと表情を湛えているのです。
そんなドリュヴィの制作を支えているのが、素材に対する飽くなき探究心です。意外性のある素材に触れたり、見慣れたオブジェをまったく新しい視点で再構成したり、常に新たな手法を模索することで、彼は自身の表現を絶えず更新し続けています。再発見や変化を恐れず、手にした素材から可能性を引き出そうとする姿勢は、彼の作品にいきいきとした動きを与えています。重なり合う質感や視覚を揺さぶる構成は、観るたびに新たな発見を呼び起こし、空間そのものに物語と遊び心を添えてくれるのです。
ドリュヴィ:開かれたアトリエから、私的な創作空間へ
ドリュヴィの制作スタイルに変化をもたらしたのは、地元のアーティストたちとの出会いでした。スタジオを訪ね歩き、地域のアートウォークに足を運ぶなかで、人々とつながる開かれた創作の場に強く惹かれていきます。そんな折、パームスプリングスの「バックストリート・アート・ディストリクト」でスタジオを構えるチャンスに恵まれ、彼は迷うことなくその場に身を置くことを選びました。人目に触れるという緊張感と、それに支えられる充実感。その場所は、単に作品をつくるための空間ではなく、自分の表現と向き合い続けるための大きな原動力となっていきました。訪れる人々や定期的なイベントが刺激となり、自然と制作にリズムが生まれ、少しずつ自分の表現がかたちになっていきます。
やがて経済的な理由からその場所を離れることになりますが、活動の拠点を自宅へと移したことで、より自分の内面に耳を澄ますような制作が育まれていきます。環境が変わっても創作の手は止まらず、むしろ、あらためて準備や柔軟さの大切さを実感することになります。ドリュヴィにとって必要な道具が揃っていることは、単なる利便性の話ではありません。ひとつ欠けるだけで制作が止まってしまうこともある。その姿勢には、素材や工程への丁寧なまなざしがうかがえます。なかでも流し台のような基本設備を含め、清潔で整った作業環境は欠かせません。自身を「きれい好きなタイプ」と語るように、視界の乱れは思考にも影響を与えるのです。
一見すると実用性を重視した作業環境のようにも見えますが、そこには彼の作品に通じる美意識が息づいています。整えられた作業台、滑らかな素材の手触り、手に取りやすく配置された道具。それらの心地よい秩序が、彼の作品に流れる静かな均衡とつながっているのです。空間を丁寧に整えることは、ひらめきをかたちにするための土台を築くということ。絵画、彫刻、装飾——どの表現であっても、ドリュヴィの作品には「意図」「明快さ」「受けとめる準備」といった姿勢が一貫して息づいています。
ドリュヴィ:土地の息づかいと、素材の力
パームスプリングスでの暮らしは、ドリュヴィの美意識や作品のテーマに大きな影響を与えています。雄大な砂漠の風景と、今なお息づくミッドセンチュリーモダン建築の存在。この街がもつ独自の視覚的世界は、彼の表現に深く染み込んでいます。地元の風景から着想を得ることも多く、作品には光の移ろいや繊細な色の変化がさりげなく組み込まれています。抽象表現に取り組む際にも、建築に見られる幾何学的な美しさや構成のバランスが、自然と作品に表れているのです。土地とのつながりが作品に確かな土台を与えながらも、観る人の解釈に開かれた余白は保たれており、そのゆるやかな交差が彼の作風の魅力となっています。
表現としては具象に寄ったスタイルをとりながらも、ドリュヴィが本当に惹かれているのは、素材を通して新しい表現を探ることです。なかでも愛用しているのが「フラッシュ®」という絵具。ベルベットのようなマットな質感と、希釈することで得られる柔らかさが特徴で、一般的な絵具とは異なる扱いが求められます。特に乾燥の早いパームスプリングスの気候では、コントロールが難しい一方で、偶然の効果を味方にできる魅力があります。ドリュヴィはこうした特性を制限ではなく、むしろ創作を導くパートナーとして捉えています。絵具の選択ひとつにしても、作品の表面や構造そのものに目を向けてほしいという彼の願いが込められているのです。
もうひとつ、彼の作品を印象づける要素に、スワロフスキー®のクリスタルがあります。美術作品で用いられることの少ないこの装飾素材を、彼はアートとインテリアの両方に大胆に取り入れています。現在では廃番となったパーツも多く、その希少性や輝き、質感が作品に独特の存在感を添えています。ただの装飾ではなく、「希少性」や「価値」といった、現代アートが抱えるテーマにも静かに触れているのです。限られた素材を丁寧に組み込むことで、視覚的な美しさに加え、所有する喜びや特別な意味が作品に宿り、コレクターにとってもかけがえのない存在となっています。
ドリュヴィ:装飾と芸術の交差点で
ドリュヴィのアーティストとしての個性は、手仕事への愛情と視覚的な物語性を融合させたひとつのコンセプトに端的に表れています。それが、彼自身が発案し商標登録もしている「クチュールナメント」というシリーズです。祝祭の楽しさと洗練されたデザインを組み合わせたこのオリジナルブランドは、単なる季節の飾りではなく、ひとつひとつが個性と美意識を宿した小さなアート作品です。すでに一部は市場に出ていますが、今後は発売時期やシリーズ構成を計画的に進め、コレクターズアイテムとして、さらには文化的な記念品として育てていきたいと考えています。彼は、祝祭の習慣に手仕事の温かさを添えることを願っているのです。
このプロジェクトは商業的な試みである以上に、ドリュヴィの創作哲学を体現するものです。どんなに遊び心のある装飾品でも、そこに芸術的な重みを宿すことができるという信念が込められています。たとえば、実在の植物とは少し異なる、どこかユーモラスな樹木モチーフのオブジェはその象徴です。彫刻とオーナメントのあいだにあるような存在感を放ち、住空間の中で視覚的なアクセントとしても、小さなアートとしても楽しむことができます。彼の祝祭をテーマにした装飾作品には、華やかさとともに、芸術性を損なわない上質さが息づいています。
影響を受けたアーティストとして、彼はエド・ルシェ、アンディ・ウォーホル、アンドリュー・ワイエスの名を挙げています。いずれも既存の価値観に挑み、新しい美のかたちを文化の中に提示してきた人物たちです。そうした姿勢への敬意は、ドリュヴィ自身のテーマや表現手法、そして常に新しさを求める姿にも反映されています。なかでも彼が個人的に強い思い入れを持っているのが、ワイエスの『薄氷』という作品です。一見すると抽象的に見えながら、よく見ると氷の下に沈む葉が細やかに描かれ、視点を変えることでまったく異なる表情が立ち現れます。この視覚的なあいまいさが、観る人に重層的な体験をもたらすのです。ひと目で心を惹きつけながら、観るたびに新たな発見がある。ドリュヴィが目指しているのは、まさにそうした多面的な魅力を持つ表現です。