「一枚の絵は、魂が通る通過儀礼のようなもの。」
内なる星に導かれて:啓示と共鳴としての芸術
レ・ウヴル・ド・エオスとしても知られるエオス(Les Oeuvres d’Eos)が絵を描き始めたのは、美術教育を受けたからでも、商業的な成功を目指したからでもありません。きっかけは2013年、宇宙との深い結びつきを感じた一瞬の体験でした。内側に静かに訪れたその目覚めは、彼女の在り方を根本から変えていきました。それ以来、創作の源となっているのは、彼女が「天体から受け取っている」と語るインスピレーション。詩と深く結びついたその作品は、視覚的な表現を超え、魂への静かな呼びかけとして存在しています。彼女のキャンバスは、単なる絵ではなく、ひとつの儀式であり、観る者が自身の本質と再びつながるための扉。目に見えないものを形にするその在り方が、エオスを単なる画家ではなく、エネルギーの橋渡しとして際立たせています。
ポーランドの芸術一家に生まれ育ったエオスにとって、創作は日常そのものでした。絵を描くことも、モデルとして制作に参加することも、ごく自然な営みだったと言います。けれど幼い頃から、ただ周囲の創作に関わるだけでなく、自分自身の手で表現を生み出したいという想いがありました。小さな石に絵を描いて売っていたという記憶を、彼女は今、前世の記憶と重ねています。芸術家としての道が過去から今へとつながっている──そんな感覚があるのです。プロとしての出発点は、一枚の絵を購入した顧客から、もう一枚を依頼されたことでした。そこから人とのつながりを通じて、活動は自然と広がっていきました。エオスにとって作品を届けるという行為は、単なる取引ではありません。天から受け取ったものを形にし、それを必要とする人のもとへと届ける。そこには、深く個人的で、どこか神聖なやりとりが確かに存在しているのです。
天と地を結ぶ架け橋として、エオスの芸術観は今も変わりません。彼女は自らを、「高次の世界とこの世界をつなぎ、メッセージをかたちにする橋渡し」だと捉えています。創作には明確な霊的な意図があり、作品ひとつひとつが「生きた存在」として扱われています。だからこそ、その絵は単なる美術品ではなく、観る人の心に静かな変化をもたらすのです。鑑賞者は、美しさ以上の何かに触れ、自身の内面で何かが動くのを感じるかもしれません。エオスにとって芸術とは、伝えるための手段でありながら、それを受け取った誰かの中で完結する体験でもあります。星のように放たれたひとすじの光が、ある魂の奥に届いたとき、その旅はようやく終わりを迎えるのです。
エオス:光のことばと、つながりとしての芸術
エオスは、大人に向けた抽象作品と、子どもたちに届ける物語性のある絵を描き分けています。この区別には意図があり、それぞれに異なるメッセージを託しているのです。大人向けの絵画は具体的なかたちを持たず、色と光、そしてエネルギーが自由に流れるままに描かれます。そこには、大地の力、宇宙のエネルギー、すべての命を動かす根源的な働きが反映されています。エオスの筆がとらえるのは、目に見えるものではなく、魂で感じるもの。対照的に、子どもたちへ向けたイラストは、より明快で親しみやすい視覚的な物語性を持ちます。形式は異なっても、そこに込められた願いはひとつ──観る人の感情やエネルギーに変化をもたらし、心を軽やかにしていくことです。
エオスは、何を描くかと同じくらい、どこで描くかを大切にしています。彼女のアトリエには、静けさと穏やかさ、そして澄んだ気配が満ちていることが欠かせません。描くという行為は、音のない儀式のようなものであり、彼女は言葉を交わすことなく、自分の内側や、高次の世界から届くものにすべてを委ねます。もし心や空間にわずかでも曇りを感じたときは、筆を取るのをやめることもあるそうです。受け取ったものが、本来のかたちからずれてしまうと感じるからです。喜びは、創作にとって欠かせない前提条件。心がその喜びで満たされたとき、彼女はインスピレーションの光を自由に流す器となり、作品が生まれます。つまり、彼女の絵は「求められたから描く」のではなく、「描ける時が来たから生まれる」──そんな儀式のような瞬間にだけ立ち上がるのです。
詩的なまなざしは、「詩こそがすべての芸術の源である」という確信にもつながっています。エオスにとって詩とは、文学の一分野ではなく、もっと根源的なもの。詩とは、文字を越えて、かたちあるものに息を吹き込み、心を揺らす源のようなものだと捉えています。彼女は特定の美術家から影響を受けたことはないと言いますが、思想や信仰の流れからは強く影響を受けてきました。なかでも仏教の教えには、美しさと心の芯を支える力の両方を感じているそうです。そうした哲学的な響きが、彼女の思考だけでなく創作の衝動にも静かに火を灯していくのです。芸術の歴史に学ぶというよりも、彼女は内なる静けさと、時を超えた叡智、そして聖なるものの中にひそむ美しさの響きに耳を澄ませながら、作品を生み出しています。
色を通して霊性が語る場所:意味を宿す作品の誕生
数あるエオスの作品の中でも、とりわけ深く心と魂に語りかけてくる一作があります。それが『Joie Céleste du Peuple des Étoiles(星の民の天上の歓び)』です。この作品は、人が本来持っている可能性を、光のように明るく、やさしく映し出しています。エオスによれば、私たちの本質は「歓び」であり、それは大地と空をつなぐ、澄んだ在り方なのだといいます。この絵には、観る人の中に眠る「軽やかさ」と「つながり」の感覚を呼び覚ます力があります。ただ眺めるものではなく、自分の奥深くにあるものと向き合うための鏡のような存在です。歓びをまっすぐに受けとめたとき、そのエネルギーは内側から外へと自然に広がり、観る人の心だけでなく、まわりの空間にまで静かな変化をもたらしていきます。
この作品には、エオスの創作全体に流れるテーマが凝縮されています。彼女にとってキャンバスとは、色やかたちの組み合わせではなく、光と動きの中に込められたメッセージを届ける場。観る人の心と静かに語り合うためのものです。心が澄み渡った状態で描かれた作品は、ひとつひとつに固有の気配が宿っています。とりわけ「歓び」へのこだわりは、彼女にとって一時の感情ではなく、日々を生きるうえでの軸となるもの。日常にまとわりつく重苦しさに対する静かな抗いであり、もっと自由で伸びやかな自分に立ち返るための呼びかけでもあるのです。エオスは歓びを、一瞬の楽しさではなく、魂の調和そのもの、そして地上での体験と宇宙の源とをつなぐ橋として描いています。
彼女がその橋を託す媒体に選んだのが、キャンバスです。彫刻を主にしてきた家族の伝統とは異なり、絵画は彼女にとって、別の次元へとひらかれた窓のような存在。とりわけ大きなキャンバスは、観る人を日常の外側へと導く入り口になります。エオスにとって絵とは、ただ視覚を飾るだけのものではありません。その場に静かな気品と余韻をもたらし、観る人に内なる世界と語り合うきっかけを与えてくれる。彼女はそう信じて、作品を送り出しているのです。
エオスの新たな挑戦:絵に声を、子どもたちに癒やしを
エオスが未来に描いているのは、「絵」「物語」「癒やし」をひとつに融合させた、まったく新しい表現のかたちです。彼女が「サウンド・ペインティング」と呼ぶこの試みは、とりわけ情緒面や発達面で困難を抱える子どもたちのために生まれました。スタイルは彼女の抽象作品とは異なり、子どもたちが親しみやすい具象的な表現が用いられます。さらに、それぞれの絵には音声が添えられており、エオス自身の語りによる詩的な物語や、声を重ねた音楽が流れます。視覚と聴覚が重なり合い、そこには、子どもたちの心にやさしく寄り添うような、癒やしと想像の空間が広がっていきます。
このプロジェクトの原動力となっているのは、彼女自身の強い願いです。エオスはこのサウンド・ペインティングを、心を支え、励まし、そっと背中を押すような作品にしたいと考えています。そしてセラピストや教育者、保育士など、子どもと関わる専門家と協力しながら、もっとも必要としている子どもたちのもとへ届けたいと願っています。これは単に飾るための絵ではありません。気持ちにそっと寄り添い、心の奥に静けさや安心感をもたらすための作品なのです。自身の声を作品に吹き込むことで、エオスは子どもたちと直接つながり、より親密であたたかな関係が生まれることを願っています。
この構想には、美しさと意味を結びつけようとする彼女の姿勢が、これまで以上に深く、実践的なかたちで表れています。芸術を癒やしの現場へと持ち込み、心に寄り添うものとして役立てたいという思いからは、創作に託された願いがどれほど大きく広がっているかが伝わってきます。宇宙のエネルギーを描き出す抽象画であっても、子どもたちに向けて特別に生まれたこのシリーズであっても、エオスの中で芸術はいつも心を動かすための器であり続けています。彼女の創作は、流行や市場の声に左右されることなく、星のささやきに耳を澄まし、魂の声に触れ、この世界の繊細なニーズに静かに応える──そんな祈りのような営みとして、これからも進み続けていくのです。
#LesOeuvresdEos