「私たちの固定観念こそが、現実を形作っています。でも、その観念を変えることで、私たちは新しい現実を創り出せるのです。創造性は私たちを変化させ、自由と幸福へと導いてくれます。」
異国の地から国際的な名声へ：ジェムチェフの軌跡
ウクライナ出身のワレリー・ジェムチェフ（Walery Jemcew）は、モスクワ繊維大学を卒業し、芸術工学士としての資格を取得。アートと技術の融合を追求するその人生は、主に絵画とデッサンを中心とした創作活動に彩られています。2003年にクラクフへ移住して以来、この活気ある都市を拠点に精力的な活動を続けています。
現在、ジェムチェフはクラクフに本部を置く国際芸術家協会「Art without Borders（国境なき芸術）」の会長を務め、また「Ambassadors of Culture（文化大使）」という国際プロジェクトを立ち上げ、キュレーターとして活動しています。さらに、ポーランド芸術家連盟、中国国際芸術家連盟、平和のための国際芸術家連盟に所属し、キルギスタン芸術家連盟の名誉会員としてその名を連ねています。
ジェムチェフの芸術的功績は、中国、カザフスタン、キルギスタン、モルドバ、ウクライナなど多くの国で高く評価され、数々の国際芸術賞を受賞。2013年から2019年にかけて、中国やキルギスタン、カザフスタン、ベルギー、ロシアでのプロジェクトに参加し、国際的なアートシーンで活躍しました。また、長年にわたりプレインエア（野外制作）のワークショップを主催し、自らも参加者としてその場を彩るなど、アートの普及に力を注いでいます。
彼の作品は、トルコ、ドイツ、アメリカ、中国、そして母国ウクライナの美術館や個人コレクションに収められており、その影響力は広がり続けています。
ジェムチェフは「芸術家には各々創作の自由がある」という信念を持ち、常に学び続ける姿勢を貫いています。過去の巨匠たちの作品から得た知識やインスピレーションを糧に、常に新しい表現を模索しています。この情熱は、彼自身が「手に入れたい」と思えるような作品を創り出す動機となっています。
彼の作品は個々にユニークでありながら、そのすべてにジェムチェフならではの特有のスタイルが込められています。意図を持って制作されたこれらの作品は、多くの観客に共有され、深く共感を得ています。
また、インターネットを活用して作品を発表し、広範なクリエイターやコミュニティと交流を続けています。このデジタル空間での意見交換を通じて、アートの楽しみをさらに広げ、新たなインスピレーションを得ています。
ワレリー・ジェムチェフ：芸術における対話と協働の力
ワレリー・ジェムチェフの創作活動において、「対話」という手法は重要な役割を果たしています。この対話的アプローチにより、彼は歴史に名を残す偉大な芸術家たちの作品と向き合い、その影響を独自の創作に反映させています。ジェムチェフにとって、このプロセスは単なる模倣や機械的な再現ではなく、研究と自己成長のための貴重な方法なのです。
この手法は、他者の芸術的世界を深く理解し、それを自身の視点から再解釈することで成り立っています。そのため、単なる模倣や盗作と誤解されるものではありません。むしろ、他者の作品から得た影響を、独自の経験や視点を通じて、新たな創造へと昇華させるプロセスといえます。
東洋心理学の考え方では、芸術家は身体的な記憶を通じて経験や情報を蓄積し、それを活かして創造性を研ぎ澄ましていくとされています。ジェムチェフもまた、この考えを実践し、他のアーティストの技法やアプローチから学びながら、それらを自身の作品の中で独自に再構築することで、さらなる進化を遂げています。
ジェムチェフの創作スタイルは、固定観念に縛られることがなく、流動的で柔軟です。そのため、彼は「旅する画家」という愛称で親しまれています。この呼び名は、彼が様々なスタイル、ジャンル、テーマ、技法を自在に探求し続ける姿勢を象徴しています。彼にとって創造とは、尽きることのない祝祭のようなものです。この探求心が、彼を常に新しい挑戦へと駆り立てています。
ジェムチェフは、創造性の本質は競争ではなく協力にあると考えています。たとえ複数の芸術家が同じアイデアを抱いていたとしても、それを共有し交流することで、新たな発見や視点が生まれると信じています。この協力的な姿勢こそが、関わるすべての人々に創造の喜びをさらに深めるものとなるでしょう。
さらに、彼は寛大さが集団の成長を促す力を持つと確信しています。芸術家たちが互いに理解を深め、創作活動を通じて自らを高め合う旅に出ることを奨励しています。彼にとって、この探求と努力こそが真の芸術の本質を成すものなのです。
東洋哲学と創造的表現への旅
ワレリー・ジェムチェフの創造性の源泉は、子ども時代の記憶と経験に遡ります。幼少期には粘土で幻想的な生き物を作ることに熱中し、11歳の頃には鮮やかな色彩に満ちた夢の中で山々を飛び回る風景が彼の記憶に深く刻まれました。
彼の水彩画の才能は、子どもの頃、アートスクールで描いた鳥の絵が教師に高く評価されたことで注目を集めました。この経験が、彼の絵画とデッサンへの情熱を目覚めさせるきっかけとなりました。
アカデミーでは優れた教授陣の指導を受け、ソ連時代の「ジャック・オブ・ダイヤモンズ」派の伝統に触れる中で、現代美術の多様な視点を学びました。さらに、東洋ヒマラヤ哲学に影響を受け、心・身体・エネルギーの調和を創作の精神的基盤としました。
博士号取得を目指す中で、ジェムチェフは「アートは科学である」という概念を提唱。芸術家を科学者のように捉え、探求の過程で「空間は形であり、形は空間である」という独自のスタイルを確立しました。この概念は、学生たちが紹介したチベット僧侶の「人生は貴重な資産である」という講義から着想を得たものです。
ジェムチェフは、幼い子どもたちのように純粋な喜びと愛を持つことが人間の本質であり、それが創造性の源であると信じています。また、思考や行動が人生を形作ると考え、創造性を通じて本来の自分と再びつながり、幸福を見出す道を示しています。
彼は、思考の枠組みを変えることで現実を変えることができ、創造性がその変革を可能にすると主張しています。また、自由と喜びをもたらす力として、創造的信条を人生の指針にしています。命をかけがえのない宝と考え、絵を描ける自分の能力に深い感謝の気持ちを抱いています。
また、チベット僧の多くが絵画や詩作、楽器演奏、踊りといった表現を通じて人生を形作っている姿勢に学び、思考、言葉、行動が充実した人生をもたらすという哲学を彼の創作に取り入れています。
ワレリー・ジェムチェフ：調和と共鳴の芸術的旅路
ワレリー・ジェムチェフにとって、絵画は瞑想であり、心身の調和を育むための大切な手段です。彼は、自身の活動が人々の幸福や繁栄に貢献することを願っています。
心・身体・エネルギーの調和を実現することで、ジェムチェフは周囲に愛と共感を広げています。現在に集中しながら作品を描くことで、個人的な執着から解放された創造が可能になります。作品の評価は観客の反応に基づきますが、思うような結果が得られなくても失望することなく前進し続けます。
彼のプロジェクトは、東洋哲学の「すべてが相互に関連し、独立した存在はない」という考え方に根ざしています。この哲学は文化や国籍、社会的背景の違いを超え、人々を結びつける力を持っています。ジェムチェフは、創造性が個人を自由にし、人々の幸福を促進すると考えています。
東洋的な創造の視点は、対立よりも調和を重視します。チベットのタンカや聖なるアイコンは、その象徴的な例であり、個人のエゴを超えた人類への贈り物として機能します。こうした芸術作品は精神の安定と調和をもたらし、健康でエネルギーに満ちた人々が生み出す喜びに満ちた創造力の証です。
ジェムチェフは、人々が創造の喜びを共有し、協力することでより良い未来を築けると信じています。彼は、その信念のもと、芸術の力でつながりを深め、調和を広げることを目指しています。
